資料:15年戦争下の朝鮮


注のページへ

講義ノートの目次へもどる

トップページへもどる


(1)「大陸兵站基地」とは

 「兵站基地」というのはもともと軍の戦略用語である。戦争の勝敗を決する重大な一要件が前線補給の確保にあることは昔も今も変りないが、そのためには戦場にもっとも近く、しかもその基地自体として自活しつつ同時に前線への補給をも確保しうる、というところが兵站基地としてもっとも理想的であろう。その意味で半島朝鮮が大陸兵站基地とよばれること、故あるかなといわねばならぬ。[中略]満州事変がその決意を促した一の契機とすれば、支那事変こそは兵站基地朝鮮の性格と使命を明確に決定した歴史的一頁であった。(朝鮮総督府情報課『新しき朝鮮』)

 抑々「大陸前進兵站基地」としての朝鮮の使命は、大陸の一角たるこの朝鮮半島に、「第二の内地」「内地の大陸的分身」或は「内地経済の前衛」とも云うべき各種産業の高度に発達した産業圏を形成し、一朝有事の際における大陸経済圏の自立を賄い得る産業的拠点を構築せんとすることにある。[中略]思想及び治安の状態において、産業発達の程度において、動力及び労力(国語を解し得る)において、三面海を繞らし、港湾に富める点において、大陸圏中、朝鮮を最も兵站基地の適地たらしめるのである。(東洋経済新報特輯『年刊朝鮮』1942年版)

 

(2)皇国臣民の誓詞(児童用)

一、私共は大日本帝国の臣民であります。
一、私共は心を合せて天皇陛下に忠義を尽します。
一、私共は忍苦鍛練して立派な強い国民になります。

 

(3)戦時下の抵抗と解放への期待

 ……依然として敵米英の経済力の強大なるを過大に評価し、長期戦の結果帝国国力の低下に依る敗戦と之に伴ふ朝鮮独立を夢想するもの、或は日ソ開戦の時期こそ朝鮮民族解放の野望達成の絶好の機会なるが如き謬想を抱くもの尠しとせず。斯る思想は[中略]折に触れ機に臨み不穏行動となり、巷に其の片鱗を露呈しつつありて遂には秘密結社を組織し不穏の画策を為すに至り[中略]最近に於ける之が事件の趨向を通観するに一般の思想傾向と軌を一にし、其の殆どが民族事件に属し精神的団結の強化と智力、体力、経済力の向上を図り以て朝鮮独立の日に備へんとする傾向を現はし、而も最近に於ける戦局の推移よりして帝国の敗色濃しと妄断不羈を策せんとする傾向あり。(近藤釼一編『太平洋戦争終末期朝鮮の治政』)

 

(4)在満韓人祖国光復会宣言(1936.6.10)の「六個条基本的総綱領」

一、全民族の階級、性別、地位、党派、年齢、宗教等の差別を問はず、白衣同胞は必ず一致団結し蹶起して仇敵たる日本奴等と戦ひ祖国を光復すること

[中略]

五、国内国外に於ける反日独立運動各種団体と愛国全志士達の中より代表を先派し以て在満韓人祖国光復委員会を組織すること

[中略]

六、在満韓人の真正なる自治と祖国光復運動に関し賛成同情する国家、民族と親密に連結を保ち仇敵たる日本強盗に向ひ協同戦線に出づべきこと

 

(5)産業別生産額の推移(単位:千円。括弧内は%)

1931 1936 1939 1941
 農業
 林業
 水産業
 鉱業
 工業
  702,855(63.1)
   59,413( 5.3)
   77,562( 7.0)
   21,741( 2.0)
  252,294(22.6)
 1,298,911(53.6)
  118,064( 4.9)
  164,003( 6.8)
  110,429( 4.6)
  730,806(30.2)
 1,644,200(42.1)
  192,600( 4.9)
  327,000( 8.4)
  240,000( 6.2)
 1,498,000(38.4)
 1,919,684(40.6)
  344,259( 7.3)
  357,852( 7.6)
  380,593( 8.1)
 1,722,255(36.5)
 総計  1,114,495  2,422,213  3,901,800  4,724,712

[資料]鈴木武雄『朝鮮の経済』。朝鮮銀行『大戦下の半島経済』。

 

(6)工場数・労働者数・工業生産額の推移

工場数 労働者数 生産額

1931
1933
1935
1937
1939
1943

  4,613
  4,838
  5,635
  6,298
  6,952
 14,856

  96,333
 108,816
 153,546
 207,002
 270,439
 549,751
     千円
  275,151

  384,822
  643,987
  959,308
 1,498,277
 2,050,000

[資料]『朝鮮総督府統計年報』各年版。朝鮮銀行『朝鮮経済年報』各年版。

 

(7)工業部門別生産額の推移(単位:千円。括弧内は%)

業  種 1930 1936 1939 1941
金属工業
機械器具工業
化学工業
ガス・電気業
窯業
紡織工業
食料品工業
製材・木製品工業
印刷・製本業
その他工業
  15,263( 5.8)
  3,328( 1.3)
  24,676( 9.4)
  6,432( 2.4)
  8,348( 3.2)
  33,674(12.8)
 152,054(57.8)
  7,037( 2.7)
  8,184( 3.1)
  4,068( 1.5)
  28,365( 4.0)
  7,398( 1.0)
 162,462(22.9)
  39,988( 5.6)
  19,032( 2.7)
  90,378(12.7)
 320,580(45.2)
  19,230( 2.7)
  12,426( 1.8)
  10,002( 1.4)
  136,092( 9.1)
   53,225( 3.6)
  501,749(33.5)
   30,462( 2.0)
   43,337( 2.9)
  201,358(13.4)
  328,352(21.9)
   21,061( 1.4)
   19,373( 1.3)
  163,270(10.9)
  137,882( 8.0)
  110,629( 6.4)
  502,904(29.2)
    −    
   68,163( 4.0)
  282,089(16.4)
  438,314(25.5)
  109,438( 6.4)
   24,995( 1.5)
   47,806( 2.8)
合  計    263,062    709,865    1,498,272    1,722,220  

[資料]鈴木武雄『朝鮮の経済』。朝鮮産業労働調査所『産業労働時報』創刊号。全錫淡・崔潤奎(梶村秀樹・むくげの会訳)『朝鮮近代社会経済史』。