左右合作運動の挫折(テキスト:4−4 左右合作運動の挫折)


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(1)合作運動の背景

a)目的

 中道勢力を中心に、信託統治問題は棚上げにして、南北統一の臨時政府樹立をめざす

b)背景(姜萬吉)

[1]単独政府樹立に反対=幅広く形成されていた中道政治勢力を基盤に統一政府
左右の対立が極限状態:李承晩中心の右翼勢力により単独政府樹立計画が本格化→井邑発言(6.3)
米ソ共同委員会決裂(5.6)
共産党弾圧激化:精版社偽札事件(5.15)→反米闘争へ

 中道派の危機感→合作へ

[2]米軍政の政策的支持
国務省の要請(1946.2):反託=極右勢力とのつながり緩め、穏健派との結びつきを強める方針

*右翼は反託=モスクワ協定と対立、しかも多数派ではなく、積極的支持はできず。一方で共産化を防ぐ(単独政府を樹立を支持すれば中道派が左派と合流の可能性)
     │
     ↓
 5月末より具体化←米ソ共同委決裂、民主議院の無能
 バーチ中尉:極右・極左勢力を孤立させ、多数の中間派を中心に親米的政権樹立をめざす

 

(2)左右合作委員会の組織

a)委員会組織に向けて

 バーチ、金奎植(民主議院副議長)、呂運亨(民戦議長団、人民党党首)と非公式に接触(5月下旬)
     │
     ↓
 バーチ宅で左右合作四者会談
 右:金奎植、元世勲(韓民党総務)  左:呂運亨、許憲(民戦議長団)
     │
     │←ホッジ、左右合作を公式に支持(6.30)
     ↓

b)左右合作委員会・第1回会談(7.25):左右から5名ずつ

┌右:金奎植、元世勲、崔東(非常国民会議副議長)、安在鴻(国民党)、金朋濬(臨政)
└左:呂運亨、許憲、金元鳳(民戦議長団)、李康国(共産党、民戦事務局長)、鄭魯(新民党)

 共通の政綱作成めざす、毎週火・金会合、議長は交替で

*比較的広い範囲の協同戦線=中道勢力結集、両翼(韓民党・共産党)からも参加

c)左右の対立

 民戦合作5原則(7.27)←朴憲永(米軍政主導の左右合作に反対)

  1. 土地改革、重要産業国有化
  2. 親日派・民族反逆者、反動巨頭(金九ら含む)の完全排除
  3. 政権は人民委へ=正当性主張

 右派、反対提案8原則(7.29)

信託統治、親日派処罰問題は後回し、臨時政府樹立を優先

 両者対立→第2回会談延期、停滞

d)再開への努力

 8月末より呂運亨の再開努力→9月に会談再開
 一方で共産党への弾圧激化、9.6朴憲永らに逮捕令(→10月人民抗争)

*中道勢力のみで再開、両翼は不参加

 左右合作7原則(10.7)←合作委で呂運亨、金奎植:左右の原則を折衷

  1. 信託統治は直接問題とせず
  2. 土地改革の方法は妥協的
  3. 親日派・民族反逆者の処断は厳格

 比較的広範な支持:金九系賛成

 反対=右:韓民党(土地改革に不満)、左:共産党(機会主義的と批判、大衆組織力に自信)

e)左派勢力の分断

 朴憲永、7原則公式批判「中間路線の存在を許さない」(10.26)
‘反動か進歩か、独立か隷属化の「試問」’
南朝鮮労働党結成(11.23)=対立決定的。新民党+共産党に人民党反主流派合流

 社会労働党結成(10.15)=委員長:呂運亨(人民党)、新民党・共産党反主流派参加→のち呂運亨らは勤労人民党組織

f)南朝鮮過渡立法議院の開設

 選挙を通じて民主議院(南朝鮮代表民主議院)を改編、これに代わる諮問立法機関設立構想(46.7)→米軍政、合作運動と二股

*米軍政の「朝鮮人化」構想=米軍政、臨時政府樹立までの立法機関と説明
     │
     ↓
 選挙公表(46.8.24)=米軍政、南朝鮮だけの独立政府樹立模索

*45名民選議員:間接選挙(総督府時代の選挙法。多額納税者と地主だけ)
 45名官選議員:ホッジ任命

 10月抗争のさなかに選挙実施(1946.10)→多くの朝鮮人は知らず。共産党ボイコット
     │
     ↓
 選挙は右派が圧倒的多数(34議席)
 ソウル当選者3名は韓民党(金性洙、金度演、張徳洙)。呂運亨落選(官選議員→固辞)
 官選議員は左派(左右合作派)中心:合作委の推薦。米軍政、バランスをとるため合作委を誘導企図
     │
     ↓

 立法議院開院(1946.12.12。議長:金奎植)→安在鴻、民政長官就任(1947.2)=中間派主導に見せかけ
合作委、事実上解消
共産党、左右合作拒否。中道左派、立法議院に参加→対立
呂運亨は次第に反米実力闘争に傾斜

     │
     ↓
 呂運亨暗殺(1947.7.19)、第2次米ソ共同委員会決裂(7.10)で合作挫折→米軍政、分断路線の確定