資料:米ソ分断占領政策の方針


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(1)カイロ宣言(1943年12月1日)

 [前略]日本国はまた、暴力および強欲により略奪した他のすべての地域から駆逐される。前記の3大国[アメリカ・イギリス・中国]は、朝鮮の人民の奴隷状態に留意し、やがて(in due course)朝鮮を自由かつ独立のものたらしめる決意を有する。[後略]

 

(2)ポツダム宣言(抄。1945年7月26日)

8.カイロ宣言の条項は履行せらるべく、また日本国の主権は、本州、北海道、九州およ び四国、ならびにわれらの決定する諸小島に局限せらるべし。

 

(3)北朝鮮進駐ソ連軍布告(1945年8月24日?)

 朝鮮人民よ。ソ連軍隊と同盟国軍隊は、朝鮮から日本略奪者を駆逐した。朝鮮は自由国になった。しかし、これはただ新朝鮮の歴史の第1ページにすぎない。[中略]……朝鮮の幸福も、朝鮮人民の英雄的な闘争と、勤勉な努力によってのみ達成される。

 日本統治下にくらしてきた苦痛の時日を追憶せよ。[中略]日本人たちは、高いところの広い家で、きれいな着物を着、うまいものを食べ、朝鮮人を蔑視し、朝鮮の風俗と文化を侮辱したことをあなたたちはよく知っている。このような奴隷的な過去は、もう来ることはない。[中略]

 工場・製造所および工作所の経営主、商業家または企業家たちよ。[中略]新しい生産企業を開始せよ。ソ連軍指令部は、すべての朝鮮企業所の財産保護を確保し、その企業所の正常な作業を保証することにあらゆる援助をするであろう。

 朝鮮労働者たちよ。労力による英雄心と創作的努力を発揮せよ。朝鮮人の立派な民族性の一つである労力に対する愛着心を発揮せよ。[中略]

 解放された朝鮮人民万歳!

 

(4)連合国最高司令官一般命令第1号(1945年9月2日)

1.……日本国内および国外にある一切の指揮官に対し、その指揮下にある日本国軍隊および日本国の支配下にある軍隊をして……左に指示せられ、または連合国最高司令官により追って指示される、合衆国、中華民国、連合王国および英帝国、ならびにソヴィエト社会主義共和国連邦の名において行動する各指揮官に対し、無条件降伏をなさしむべきことを命ず。[中略]

(イ)満洲、北緯38度以北の朝鮮、樺太および千島諸島にある、日本国の先任指揮官ならびに一切の陸上、海上、航空および補助部隊は、ソヴィエト極東軍最高司令官に降伏すべし[中略]

(ホ)日本国大本営ならびに日本国本土、これに隣接する諸小島、北緯38度線以南の朝鮮、琉球諸島およびフィリピンにある、先任指揮官ならびに一切の陸上、海上、航空および補助部隊は、合衆国太平洋陸軍最高司令官に降伏すべし[後略]

 

(5)アメリカ太平洋陸軍最高司令官マッカーサー布告第1号(1945年9月7日)

 [前略]本官は、本官に付与されたアメリカ太平洋陸軍最高司令官の権限をもって、ここに北緯38度以南の地域および同地域の住民に対し、軍政を樹立し、占領に関する条件を左記の如く布告する。

1.北緯38度以南の朝鮮の地域および同地域の住民に対する一切の行政権は、当分の間、本官の権限の下に施行される。

2.今後、命令が出されるまで、公共福祉・公衆衛生を含む全公益事業の有給・無給の幹部ならびに従業員、国家公務員、地方公務員、名誉職員およびその他の重要な任務に携わっている者はすべて、従来の職務に従事し、かつ一切の記録および財産の保管に努めること。

3.すべての住民は、本官および本官の権限の下に発せられた命令に対し、ただちに服従すること。占領軍に対し敵対行為をなした者、または治安を攪乱する行為をとった者は、これを厳重に処罰する。[後略]

 

(6)ソ連軍最高総司令部の北朝鮮占領方針指令(1945年9月20日)

 赤軍部隊の北朝鮮占拠に関し、ソ連軍最高総司令部は以下の指示を発する。

1.北朝鮮の領土内にソビエト(議会)およびその他のソビエト機関を樹立せず、またソビエトの秩序を導入しないこと。

2.北朝鮮に反日的な民主主義政党・組織の広範なブロック(連合)を基礎としたブルジョア民主主義政権を確立すること。

3.この点に関し、赤軍が占拠した朝鮮各地域に反日的な民主主義組織・政党が形成されるのを妨害せず、その活動を援助すること。

4.地元住民に以下のことを説明すること。

 a.赤軍は北朝鮮に日本侵略者の粉砕を目的に進入したのであり、朝鮮でのソビエト秩序の導入や朝鮮領土の獲得を目的としていない。

 b.北朝鮮の私有財産および公的財産はソ連軍当局の保護下に置かれる。

5.住民に対し、平時の仕事を続け、工業・商業・公営その他の企業の通常の活動を保証し、ソ連軍当局の命令や要求を遂行し、かつ社会秩序の維持に協力するよう呼びかける こと。

6.北朝鮮駐留部隊に対し、規律を守り、住民の感情を害せず、礼儀正しく振る舞うよう指示すること。

7.北朝鮮の民間行政の指揮は沿海州軍管区軍事評議会が遂行すること。

 

(7)ベニングホフ政治顧問のアメリカ国務省に対する報告書(1945年9月15日)

 [前略]即時独立と日本人の一掃が実現しなかったために大変な失望がわき上がっている。朝鮮人の日本人に対する憎悪は信じられないほど激しいものであるが、しかしアメリカ軍の監視がある限り、彼らが暴力に訴えるだろうとは考えられない。/[中略]日本人官僚の排除は世論の見地からは望ましいものであるが、当分その実現はむずかしい。[中略]なぜなら、政府機関、公共施設、報道機関を問わず、下級職員を除くと資格をもつ朝鮮人職員が存在していないからである。それに日本人の下で高級職に就いていた朝鮮人がいても、彼らは親日派と見なされ、ほとんど彼らの主人と同じように憎まれている。[中略]/あらゆる政治団体が共通してもっている考え方は、日本人の財産を押収し、朝鮮から日本人を追放し、そして即時独立を達成するということのように思われる。それ以外のことについては考えはほとんどない。朝鮮はアジテーターにとって機の熟した絶好の場なのである。/[中略]政治情勢のなかで最も勇気づけられる唯一の要素は、ソウルに練達の士でかつ高学歴の数百人の保守主義者が存在していることである。彼らの大部分は対日協力の前歴をもつ者であるが、しかしその汚名は終局的に消えるだろうと思われる。これらの人々は「重慶臨時政府」の帰国を支持しているし、よしんば多数派ではないにせよ、一つの集団としてはおそらく最大のものである。[後略]