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Tengyong's Taiwan Reports

No.4 (Dec. 24, 2003)  上中文課

台湾大学総図書館の入口に飾られたクリスマスツリー。
台湾師範大学国語教学研究中心の7階ロビーにも、12月に入ってクリスマスツリーが飾り付けられました。
台湾大学向かい側の書店のクリスマスツリー。
世界最高のビル・台北101金融大楼の入口ではクリスマスツリーの飾り付けとともに入場者の体温検査が念入りに行われていました。もちろんSARSに対する警戒です。
国立台湾博物館の入口前は、大晦日に開催されるコンサートの会場になるため、設営が進められていました。
聖誕節快楽! クリスマスの飾りつけで、台北の街中は普段より華やかな雰囲気です。ただ日本のように、誰彼なしに大騒ぎしている様子は見かけません。新暦の正月に向けて、とくに人々が慌しく過ごしているわけでもありませんし、何と言ってもこちらは日本の秋のような気候ですから、どうにも年の瀬が迫っているという気がしません。台北の最低気温が10度を下回ったことは今のところなく、街中の木々ももちろん緑のままです。ただ室内に暖房設備が整っていないので、夜中に冷え込んだりすると、かなり寒く感じるときがあります。ひょっとしたら、こういうことになるかも知れないと思って、日本から電気カーペットを持って来たのは大正解でしたが、それだけでは間に合わないので、電気ストーブでも買おうかと真剣に悩んでいるところです。
こちらに来て3ヵ月が経とうとしていますが、いろいろな面でようやくリラックスした日々を送れるようになってきました。現在の私の生活パターンはと言えば、平日はまず朝の8時から10時まで、今月(12月)から通い始めた台湾師範大学の中国語講座に出席します。授業が終わると、コーヒーショップで一服したり、街中を見て回ったり、こまごまとした雑用を処理するなどして、遅くとも正午ぐらいまでには台湾大学の研究室に行きます。午後は大学で研究と中国語の勉強などで過ごし、夕方になるとおとなしく帰宅します。一緒に飲み歩くような知人もいませんし、台湾のテレビは残念ながらあまり面白いとは言えないので、帰宅後も主に中国語の勉強をして過ごします。週末になると、1日はどこかに遊びに出かけ、もう1日は自宅にいて、溜まっていたいろいろな仕事を片付けます。
こう書いてみると、いかにも規則正しい優雅な生活のようです。確かにそうなのですが、学校に通って中国語を勉強するとなると、どうしてもそれが生活の中心になってしまい、その他のことに十分な時間を充てられないというのが、今の「悩み」と言えば悩みでしょうか。ただ今回の滞在中の前半は、じっくり中国語の勉強をしようと考えていたので、当面はこれでよいとも思っています。
これまでのレポートが少し堅苦しくなった嫌いがありますので、今回はおそらく関心をお持ちの方も多いと思われる、台湾での外国人の中国語学習事情についてご紹介しましょう。と言っても、私が知っているのは、現在通っている台湾師範大学国語教学中心(CCLC)の雰囲気ぐらいなのですが。
台湾師範大学国語教学中心は、1000名もの学生が在籍する台湾最大の外国人向け中国語教育機関で、3ヵ月間を1学期とし、毎年3月、6月、9月、12月に新学期が始まります。いろいろな条件を考えて、来台前から中国語の勉強をするなら、ここが適当だろうと考えていました。ただ私は学期途中の10月に来たのですぐには入学できず、当初は自宅に近い中華語文研修所(TLI)という語学学校で個人レッスンを受けていました。この学校の規模もなかなか大きくて、台湾各地に分校をもつほか、中国大陸や日本にも進出するなど、幅広く事業展開をしているようです。渡されたテキストも大陸のスタッフと共同編集したもので、大陸式の簡体字とピンイン表記を採用していたのには驚かされました。
さて国語教学中心のクラスは、レベルによってかなり細かく分かれており、私は基礎の上程度のクラスに配属されました。それまで語学学校で学んでいたレベルよりは、少し基礎的なことを復習することになったわけですが、プレースメントテストで聴き取りの出来が、ことのほか悪かった結果だと思います。朝鮮語を勉強するときもそうでしたが、漢字語を文字に頼って理解しようとすると、リスニング能力の上達を妨げかねませんので、要注意です。
現在私が勉強している『実用視聴華語1』というテキストは、国語教学中心が編集した最も基礎レベルの教材です。全25課、530ページからなる電話帳のような分厚いテキストで、初版は1999年と比較的新しく、補助教材として、購入が義務づけられているワークブックのほか、カセットテープやVCD(ビデオCD)も販売しています。基礎とは言っても、日本から持参した一般向けの中国語文法書と見比べると、その内容はほとんど網羅されています。専門家のご意見を伺わねばなりませんが、おそらくこのテキストの文法事項を完璧にマスターし、語彙や表現を増やしていけば、日常生活にはほぼ不自由しない程度の語学力を身に着けられるのではないでしょうか。(英語で言えば、中学校3年生の学習を終えた程度の段階でしょうか。)
テキストの文字表記は当然、繁体字(日本の旧漢字に相当)ですが、索引には大陸式の簡体字も記載されています。また発音表記も、中国語の伝統的な発音符号である注音(いわゆるボポモフォ)と大陸式のピンインが併記されており、大陸式の中国語表記――日本ではほぼこれに統一されています――に慣れた学生も、無理なく勉強できるよう柔軟な配慮がなされています。なお現在大陸では、いわゆる「普通話」を「漢語」と呼ぶのが一般的になっていますが、台湾では「中文」「中国話」あるいは「華語」(文章語)などと称する場合が多いようです。(もちろん「国語」と呼ぶ場合もあります。)
授業は1週間にほぼ1課のペースで進められるので、このテキストの最初から学び始めた学生は、ほぼ半年かかってこれを終えることになります。ちなみに私は第17課からスタートするクラスに配属され、いまは補語をともなう複合動詞などの文法事項を中心に勉強しています。3週間学んでみて、知識としては知っているつもりでも、消化不良のままになっている事項を改めて学び直すことができ、今の私には適当なレベルと感じています。順調にいけば2月半ばにはこのテキストを終え、次のレベルに進む計算になります。
私たちのクラスは10名で、「国籍」別で言えば、日本人4名、インドネシア人3名、韓国人・アメリカ人・ブラジル人各1名、「性」別では、女性6名、男性4名という、まずまずバランスのとれた構成です。(クラスによっては、ほとんどが日本人というところもあるそうです。)それぞれに中国語を学ぶ事情は違いますが、みな意欲があり個性的で、なかなかよい雰囲気です。教えて下さる女性の先生は、(しばらくテレビで見ませんが)女優の藤田弓子さんに似たベテランの方で、エネルギッシュで明るく、熱意のある優れた教師です。授業中は絶えず学生の関心を引きつけ、また課題を与えて集中させ、宿題(作文が中心)も毎日のように出ます。各課の学習は、まず新出単語を習ったあとでリスニングの小テストを行い、続いて文法事項の解説と練習、テキスト本文の解説と練習、そして総合練習へと進みます。そして各課が終わると、まとめのテストが実施されます。
残念ながらと言うべきか、当然と言うべきか、私はクラスで最年長です。発音や文法事項の理解などは、決して若いクラスメートに負けていないと思うのですが、会話能力は明らかに私が一番劣っています。とくに日本人と韓国人以外は、漢字のハンディが大きいわけで、非漢字圏から来たクラスメートたちの判断力の速さ、感覚の鋭さには、大いに刺激されます。ここ十数年は、もっぱら教える立場、出題・採点する立場だったため、久しぶりに学ぶ立場、テストを受ける立場になると、なかなか緊張もしますし、何よりも学生にとってよい教え方とはどういうものなのかを、改めて考えさせられる毎日です。
また師範大国語教学中心では、さまざまな文化研修にも力を入れており、私がここを選んだ理由の一つもこの点にありました。京劇の鑑賞プログラムに参加したことは、すでに Taiwan's Portraits のページでお伝えしましたが、隔月に1度のペースで台湾映画の鑑賞会も開催されており、今後の企画を楽しみにしているところです。その他、コンピュータールームや視聴覚室、図書室などの施設も整っており、非常に充実した学習環境にあると言えるでしょう。
私にとってじっくり中国語を勉強できるのは、おそらくこれが人生最後の機会になるはずです。史料は逃げたりしませんが、今の私の職場での状況を考えると、中国語の勉強は二度とできそうにありません。当面はこの恵まれた環境を生かして、中国語の勉強に多くの時間を費やすのがよさそうです。
少し師範大の中国語講座を持ち上げすぎたかもしれません。(本職が教員である私が言うのも語弊があるかも知れませんが、教員やクラスに、いわゆる「当たり」「はずれ」があるとも聞いています。)ともかく、原稿送付が遅れているのはこういった事情からでして、ご迷惑をおかけしているみなさん、対不起 m(_ _)m! そしてこれが今年最後のレポートになるはずです。どうぞみなさん、よい年をお迎え下さい。
台湾師範大学の博愛楼。このビルの5〜10階が国語教学中心です テキスト『実用視聴華語1』とカセットテープ。 台湾師範大学本部キャンパスの行政大楼。もとは植民地時代の旧制台北高等学校の校舎でした。
中国語の伝統的な発音符号である注音と、正確な発音を学ぶための5日間の特別講座が、学期初めに開かれました。 国語教学中心の文化研修として実施された京劇紹介プログラムでは、台湾戯曲専科学校の学生により京劇「金銭豹」が上演されました。 大学のすぐそばの小さな路地に、飲食店が集中しています。夕方になると「師大夜市」としてにぎわう通りです。