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Tengyong's Taiwan Reports

No.10 (Sep. 25, 2004)  希望再見

台風が台北を直撃した翌日、8月25日の台湾大学前・新生西路の模様。
南投・中興新村にある台湾文献館。旧台湾総督府の文書を所蔵しています。
総統府庁舎は現在改修中です。
台北の南・新店渓の風景。
帰国まであと5日を残すばかりとなりました。南国・台湾では日中の気温はまだ30度を越す日々ですが、さすがに9月中旬ごろから、日が暮れると秋の風を感じるようになっています。
荷物はすでに船便で送り返しました。帰国後にトラブルが起こった場合のことを考え、台湾に進出している日本の某業者を利用しましたが、大きめの段ボール箱20数個を梱包までしてくれて3万6千元(約10万円強)と、まずまずの料金で済ますことができました。お世話になった方々に挨拶に行ったり、この間一緒に調査をしてきた台湾大学の大学院生が歓送会を開いてくれたりと、気分はすっかり帰国モードです。
一方でこの1カ月ほどは、締め切りが迫った原稿の執筆に追われ、また土壇場になって重要な文献を発見し慌ててコピーしに図書館に通うなど、遊びに行くこともほとんどままなりませんでした。旧台湾総督府の文書を所蔵している南投の台湾文献館へ調査に行った折に、宿泊した台中の街をわずかに散策できた程度です。まだまだ見ておきたかったところがたくさん残っているのですが、1年間の滞在ではこれぐらいが限界かも知れません。最近は写真もアップロードできない状態ですが、帰国後に何とか時間を見つけて整理し、今回の滞在を振り返ることができるようにしたいと思っています。
さて前回のレポートを書いてからも、台湾ではいろいろなことが起こりました。今年の日本は史上最多の台風が上陸したそうですが、台湾でも8月から9月にかけて本当にたくさんの台風がやって来て、各地に大きな被害をもたらしました。私の住んでいる付近は幸い大した被害は出なかったのですが、それでも8月末には全く外出できないほどの豪雨が1日半も続いたことがあります。天気予報によれば、どうやらまた台風が近づいているようで、予定日に帰国できない事態が起こらないか、案じているところです。
またアテネ・オリンピックで台湾が2個の金メダル(いずれもテコンドー)を獲得したことも、大きく報道されました。驚いたことに、台湾のオリンピックでの金メダル獲得は初めてなのだそうです。テコンドーでは銀メダルも一つ獲得しましたが、その銀メダリストが年末の立法委員(国会議員)選挙に、国民党から出馬するというニュースが一昨日報道されました。ただ期待された野球が決勝トーナメントへ進出できなかったため、盛り上がりはいまひとつといったところでしょうか。なお野球のアジア予選のときに、台湾チームの公式名称を「中華隊」から「台湾隊」に変えるべきという声は聞こえないと書きましたが、オリンピック後にある新聞社が実施した世論調査によれば、多数の人びとが「台湾隊」に変えることに賛成していました。(記事をスクラップし忘れたためうろ覚えですが、だいたい40〜50パーセント程度であったと思います。)オリンピック本大会では、大陸の選手団は「中国」と報道されたため、何の競技か忘れましたが、「中華対中国」という奇妙な対戦カードがテレビ画面のテロップに流れたこともありました。
ちなみに、Chinese Taipei という台湾のオリンピックでの呼称は漢字で表現すると、「中華台北」なのだそうで、「中華台北隊」の省略形が「中華隊」ということになるようです。国家の呼称と言えば、政府関係者や政治家たちが海外で使用する呼称がばらばらなので、最近改めてこれを統一しようという動きがありました。政府としては、英文では "TAIWAN, R.O.C."で統一したいようですが(R.O.C.= Republic of Chima =「中華民国」)、これを漢字でどう表記するかについては、なかなか意見がまとまらないようです。呼称の問題が象徴するように、「中華民国」という「国家」の行方がどうなるのかは、いまの段階では予測のつかない大変難しい問題です。成り行きによっては東アジアに大きな緊張をもたらす可能性があるだけに、不幸な事態が起こらないよう、日本に住む私たちも関心を持ち続ける必要があります。
台湾社会がこうした不安定な要素を内包し、またさまざまな解決すべき課題を抱えた社会であることは否定できません。しかし1年間滞在してみて何より印象的であったことは、この社会に生きる人びとのリラックスした明るい表情でした。閉塞感が漂う日本社会の雰囲気に比べて、台湾や韓国などでは社会の活力のようなものを折に触れて感じることができます。加えて台湾社会の開放的な雰囲気は、外国人居住者に住みやすい環境をつくり出しているようです。滞在によって台湾のことをいっそう好きになれたことこそが、今回の最大の収穫だと考えています。この間お世話になった台湾のみなさん、本当にありがとうございました。
台湾でのレポートは今回で終わりですが、写真整理の作業が宿題として残っていますし、また研究の面でも台湾史に関連する成果を発表できればと計画しているところです。台湾に関心をお持ちの方にはまた違った形でお目にかかれる機会があるかもしれません。希望有機會跟你們再見個面! みなさん、どうぞお元気で!