「慰安婦」問題と歴史修正主義についての略年表

1988年1989年1990年
1991年1992年1993年1994年1995年
1996年1997年1998年1999年2000年
2001年2002年
1997年5月5日作成
1999年4月5日改訂
2002年5月17日3訂

《1988年》
2.12〜 2.21 韓国教会女性連合会の尹貞玉ら3名が、福岡から沖縄まで慰安婦の足跡を追う調査
7.20 韓国教会女性連合会、「挺身隊研究委員会」設置
《1989年》
1. 7 韓国女性団体連合が昭和天皇の葬儀への弔問使節派遣に反対する声明書発表。「挺身隊問題」にも言及して日本に謝罪要求
《1990年》
1. 4〜 1.24 尹貞玉「挺身隊取材記」が韓国の『ハンギョレ新聞』に4回にわたって掲載
6. 6 参議院予算委員会で本岡昭次議員(社会党)が慰安婦の実態調査を日本政府に要求。清水傳雄・労働省職業安定局長は、慰安婦は「民間の業者が軍とともに連れ歩いた」「調査はできかねる」と答弁
7.10 韓国で挺身隊研究会(現・挺身隊研究所)結成
10.17 韓国女性団体連合、韓国教会女性連合会など37の女性団体が、日本政府の国会答弁に抗議する公開書簡を送付
11.16 韓国の37女性団体が韓国挺身隊問題対策協議会(以下、挺対協)を結成
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《1991年》
4. 1

参議院予算委員会で、本岡昭次議員が韓国女性団体の「公開書簡」への回答を求めたのに対し、谷野作太郎・外務省アジア局長は「調査したが手がかりになる資料がない」、若林之矩・労働省職業安定局長は「当時の担当部署は全く関与していなかった」と答弁

8.14 金学順が韓国で初めて元慰安婦として名乗りを上げ、記者会見
10.18 沖縄で元慰安婦柝奉奇の死亡が確認される
12. 6 金学順ら元慰安婦3名が、軍人・軍属らとともに、日本政府の謝罪と補償を求めて東京地裁に提訴
《1992年》
1. 8 挺対協、日本大使館前で第1回目の水曜定期デモ
1.11 旧日本軍の慰安所設置、慰安婦募集統制を示す資料が、吉見義明・中央大教授により、防衛庁防衛研究所図書館で発見されたことを『朝日新聞』が報道
1.13 加藤紘一官房長官、「軍の関与は否定できない」と談話発表
1.17 訪韓した宮沢喜一首相が、盧泰愚大統領に慰安婦問題に対して公式謝罪
2. 1 日朝国交正常化交渉で、日本政府が慰安婦問題に関し、北朝鮮側に謝罪表明
2.25 韓国政府、被害者センターを設置して被害申告と証言の受付を開始
5.上旬 秦郁彦「従軍慰安婦たちの春秋」(『正論』1992年6月号)が、吉田清治『私の戦争犯罪』の記述を虚偽と主張
7. 6 日本政府、第1次調査結果公表。政府の直接関与を公式に認めたが、強制連行を立証する資料は発見されず。「補償に代わる措置」検討表明
7.31

韓国政府、『日帝下軍隊慰安婦実態調査中間報告書』発表。慰安婦の募集などで、威圧的な雰囲気による方法や事実上の動員があったと指摘

8.10〜8.11 第1次「挺身隊問題解決のためのアジア連帯会議」がソウルで開催。被害国の韓国・台湾・フィリピン・香港などと日本の市民団体が参加(以後、日本、フィリピンなどで開催)
10.30 韓国・仏教人権委員会、元慰安婦の共同生活施設として「ナヌムの家」開設
12.25 韓国・釜山などの元慰安婦、元女子勤労挺身隊員10名が、山口地裁下関支部に提訴(関釜裁判)
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《1993年》
2. 1 韓国で証言集『強制連行された朝鮮人「慰安婦」たち』(挺対協、挺身隊研究会編)刊行(2001年末現在、第5集まで刊行)
4. 2 マリア・ロサ・ヘンソンらフィリピン人元慰安婦、東京地裁に提訴
4. 5 在日の元慰安婦の宋神道、東京地裁に提訴
4.21 「日本の戦争責任資料センター」発足(代表・荒井信一)
5.11 94年度用高校日本史教科書のすべて(7社9種)に、慰安婦に関する記述のあることが判明
6.11 韓国で「日帝下日本軍慰安婦に対する生活安定支援法」制定。93年8月より元慰安婦に一時金、生活費支給など開始
8. 4 日本政府、第2次調査結果発表。河野洋平官房長官、談話で慰安婦の募集、移送、管理などが「本人たちの意志に反して行われた」ことを認め「お詫びと反省の気持ち」を表明
8.23 自民党国会議員の靖国神社公式参拝を推進するグループが、細川護煕首相の「侵略戦争」発言(8.9)に反発して「歴史・検討委員会」設置(委員長・山中貞則、事務局長・板垣正)
《1994年》
1.25 オランダ人元慰安婦・捕虜など東京地裁に提訴
4. - 藤岡信勝・東大教授、雑誌『社会科教育』に「『近現代史』の授業をどう改造するか」の連載を開始(1996.3『「近現代史」の改革』として出版)
8.13 日本の新聞各紙が「民間募金による見舞金支給」構想を報道。政府は民間の第三者機関による基金に政府が援助する形を検討中という内容
8.22 元慰安婦および支援35団体が「民間募金構想撤回と被害者個人への謝罪と補償を求める共同声明」を発表
11.22 ICJ(国際法律家委員会)が報告書を発表。慰安婦被害者には個人補償請求権があると結論。日本政府に行政機関の設置、立法措置、仲裁裁判に応ずべきと勧告
12. 1 連立与党の戦争謝罪国会決議案に反対し、自民党内に「終戦五十周年国会議員連盟」(会長・奥野誠亮)が発足
《1995年》
1.24 日本弁護土連合会、「従軍慰安婦問題に関する提言」をまとめ、政府に提出。立法措置などにより、元慰安婦個人に補償するよう求める
1. - 「自由主義史観」研究会の発足準備スタート(代表・藤岡信勝。正式発足日は不明)
2.15 「自由主義史観」研究会、会報創刊号発行
4.22 韓国の記録映画製作所ポイムが、映画「低い声」(日本版タイトル「ナヌムの家」。ビョン・ヨンジュ監督)発表(以後、97年に「ナヌムの家 II」、2000年に「息づかい」発表)
6. 9 衆議院本会議で「戦後五十年国会決議」採択
7.19 「女性のためのアジア平和国民基金」(以下、アジア女性基金)発足。韓国・挺対協など内外43団体が基金発足に反対する声明発表
8.15 韓国「21世紀画廊」で光復50周年記念ハルモニ絵画展開催(以後、韓国・日本・アメリカの各地で開催)
9.20 「自由主義史観」研究会、機関誌『「近現代史」の授業改革』創刊
12.9 「ナヌムの家」京畿道広州郡退村面に移転
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《1996年》
1. 4 クマラスワミ特別報告官、国連人権委員会に慰安婦問題に関する報告書提出、日本政府に国際法違反の法的責任を受け入れるよう勧告(2.6 報告書の内容が公表)
1.15 「自由主義史観」研究会、『産経新聞』に「教科書が教えない歴史」連載開始
3.30 ソウル、マニラ、台北各市長が日本政府に被害賠償を促す書簡を発送
4. 9 自民党の「終戦五十周年国会議員連盟」が「明るい日本・国会議員連盟」(会長・奥野誠亮、事務局長・板垣正)と名称変更決定(6.4 結成総会。奥野会長が記者会見で「慰安婦は商行為」「強制連行はなかった」と発言、教科書の記述を批判)
4.29 国連人権委員会、クマラスワミ報告書全体に留意する(take note)との支持決議採択
6.27 97年度用中学校社会科教科書の検定結果が公表。7冊すべてが慰安婦に関して記述
7.20 自由主義史観研究会、中学校教科書からの慰安婦記述削除要求など、歴史教科書批判を全国規模で展開することを決定(1996年8月付で、緊急アピール「中学校教科書から『従軍慰安婦』の記述の削除を要求する」発表)
8.上旬 小林よしのり「新ゴーマニズム宣言」(『SAPIO』連載)が、元慰安婦の証言やマスコミの報道内容に疑問を提起
8.14 アジア女性基金、フィリピンの元慰安婦に償い金を支給する手続きを開始
9.22 「日本を守る国民会議」が教科書からの「慰安婦」関連記述の削除を求めて、1カ月の全国縦断キャラバン開始
10.18 韓国で「日本軍“慰安婦”問題の正しい解決のための市民連帯」発足。アジア女性基金に対抗し、被害者支援の募金活動開始(97.5.21解散)
12. 2 「新しい歴史教科書をつくる会」(以下「つくる会」創立記者会見。呼びかけ人は、藤岡信勝、西尾幹二、小林よしのり、坂本多加雄、高橋史朗ら9名
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《1997年》
1.11 アジア女性基金、非公開のうちに韓国の元慰安婦7人への償い金支給を開始。韓国政府、「支給を強行したことは遺憾」とコメント
1.30 「つくる会」設立総会(会長・西尾幹二、副会長・藤岡信勝)
2. 1 テレビ朝日系列「朝まで生テレビ」で「従軍慰安婦問題と歴史教育」をテーマに討論
2. 2 元慰安婦の姜徳景が死去
3.31 新しい歴史教科書をつくる会、第1回シンポジウム「『自虐史観』を超えて」開催
5.24 「女性・戦争・人権」学会発足(代表・志水紀代子)
5.31 「日本を守る国民会議」と「日本を守る会」を統合して「日本会議」(会長・塚本幸一)が発足
12.16 元慰安婦の金学順が死去
12.25 小林よしのり、上杉聰『脱ゴーマニズム宣言』(東方出版)が複製権侵害などにあたるとして東京地裁に告訴
《1998年》
4.27 「関釜裁判」で山口地裁下関支部が、日本国に対し元慰安婦3名に各々30万円の賠償金支払いを命じる判決
5.23 映画「プライド 運命の瞬間(とき)」全国一斉上映開始
6. 6 VAWW-NET Japan(「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク)発足(代表・松井やより)
7.10 小林よしのり『新ゴーマニズム宣言 SPECIAL 戦争論』(幻冬舎)刊行
8. 8 国連差別防止・少数者保護小委員会のマクドガル特別報告書の内容が明らかになる。慰安婦問題について、責任者処罰、元慰安婦への損害賠償などを日本政府に勧告
8.14 韓国「ナヌムの家」敷地内に「日本軍慰安婦歴史館」オープン
8.20〜 9.16 「日本会議」全国キャラバン。47都道府県で県民大会、県本部設立大会・準備会など開催
12.14 文部大臣が2002年度から実施される中学校学習指導要領を告示。教科内容全体が3割程度削減
《1999年》
10.29 西尾幹二著・「つくる会」編『国民の歴史』(産経新聞社ニュースサービス発行)発売。初版35万部
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《2000年》
4. 4 財界人・文化人・教育関係者による「教科書改善連絡協議会」(会長・三浦朱門)が発足。設立趣意書で、現在の小中学校歴史教科書では国に対する誇りを感じることができない、全国の教育委員に教科書採択権の正しい行使を要請する、と述べる。目的の達成のため「国会議員、地方議員との協力関係を結」ぶ方針
4.13 扶桑社が「つくる会」作成の2002年度用中学校歴史教科書を、文部省に検定申請
7. 1 中学校歴史教科書の検定申請本8種の内容が報道される。「慰安婦」についての記述が3社に減少することなどが判明
9.18 アメリカ・ワシントン連邦地方裁判所に、日本政府を相手取って損害賠償を求める集団訴訟を起こす
12.7〜12.12 VAWW-NET Japan、東京・九段会館で 「女性国際戦犯法廷」を開催。のべ約5000名が参加。昭和天皇と9人の軍部・政府指導者を人道に対する罪で有罪と認定し、日本政府には国際法違反により賠償する国家責任があると判断(2001.12.4、オランダ・ハーグで最終判決)
《2001年》
3. 4 「つくる会」歴史教科書に対し、文部科学省側が137カ所の検定意見をつけ、執筆者側はすべて修正に応じたことが判明する
3.29 関釜裁判控訴審で広島高裁は元慰安婦たちの損害賠償請求を棄却し、逆転敗訴
4. 3 文部科学省が2002年度用小中学校教科書の検定結果を発表。「つくる会」中学校歴史・公民教科書も合格
5. 8 韓国政府、日本政府に対して中学校歴史教科書の記述修正を要求。修正要求項目は「つくる会」教科書25カ所、既存7種10カ所
5.16 中国政府、歴史教科書問題について日本政府に申し入れ。「つくる会」教科書の8項目について記述修正を要求
6. 4 扶桑社、「つくる会」歴史・公民教科書(歴史30万部、公民5万部)の市販開始。発売初日に歴史20万部、公民10万部を増刷(9.3現在で歴史は7刷、58万5千部発行)
7. 2 「つくる会」歴史教科書、韓国併合など7項目9カ所の記述の自主訂正を、文部科学省に申請
7. 9 文部科学省、韓国・中国政府の修正要求に対する「検討結果等に関するコメント」発表。「つくる会」歴史教科書の訂正は求めない方針
8.15 全国544採択区すべてで「つくる会」歴史・公民教科書が採択されなかったことが明らかになる。採択を決めた東京・愛媛の養護学校と、一部の私立学校を合計しても、歴史・公民ともに0.1%以下の採択率と推計
8.16 「子どもと教科書全国ネット21」常任運営委員会、声明「『つくる会』教科書の国・市区町村立中学校採択ゼロは市民の良識の勝利です」発表。一方、「つくる会」は次回検定(2006年度使用開始)への再申請、小学校社会科教科書(2005年度使用開始)への新規参入方針を発表
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《2002年》
4. 9 文部科学省が2003年度用高等学校教科書の検定結果を発表。明成社版・高校日本史B教科書(現在使用されている国書刊行会版『最新日本史』の改訂版)も合格

【主要参考文献・ホームページ】

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